一般社団法人日本美容医療リスクマネジメント協会 会長理事 白壁 征夫

私が美容外科という医療に従事して半世紀近く経ちますが、常に「美容医療は他の科目と異なり、患者様に夢を与える仕事である。」という信念をもって勤めてまいりました。
この間、美容医療業界は目覚ましい発展を遂げ、特にバブルの頃から急速に伸展いたしました。
「メスを使う」いわゆる侵襲的施術はもちろんのこと、レーザーやフィラー等、新たな技術や器械による治療の普及により多様化が進み、美容医療が単なる医療行為ではなくサービス行為としての要素も強めてまいりました。
そのため、医療者と患者様の両方に新たな問題が浮上してきていることも否めません。
事故に関しても従来は「手技・医療行為そのものの過失・注意義務違反」もしくは「説明義務違反」の2種類に大別することができましたが、近年は施術不良に対する不満は当然のこととして、販売方法やサービスに対するクレームが増加し、単なる医療事故として片付けることが難しくなってきたことも周知の事実です。
情報過多な患者様が広告や口コミに過剰な期待感を持ち、「美容医療」=サービス行為と錯覚して来院することも少なくないようです。医療者側も、集客行為としての広告宣伝におけるイメージ作りに頼りすぎ、価格競争に巻き込まれて十分な安全管理体制の整備や指針を用意せずに施術を行ったり、未成熟な薬剤を使用したり、事故の原因を自ら増やしているのが実情です。
このような社会情勢の中、残念なことに医師会等で取り扱っている医師賠償責任保険は未だに美容医療を除外しており、医療者の患者様に対する補償問題を空白状態にしています。
私たちは、このような状況を少しでも打開するため、平成14年8月に共済会制度を立ち上げ、運営をして参りました。
有責・無責を問わず医療者が安心して診療にあたることができるよう「苦情・クレーム」の相談窓口を提供し、医療者から報告を受けた場合は、審査委員会にて過失の有無を審査し、有責の場合は査定委員会にて補償額を算定し、患者様の被害に対して消費者保護の志を持って迅速に賠償することを心がけています。一方、医療者無責の場合は、苦情処理専門会社と弁護士を委任し、患者様の心情を害することなく円満解決を図っております。
これまでの当協会の発展を喜ばしく感じるとともに、これから美容医療に参入する方々にも研修や教育面で献身していく所存です。
美容外科医・サフォクリニック院長(http://www.sapho-clinic.com/)
国際美容外科学会 教授・医学博士
国際形成外科学会 会員
国際美容外科学会 会員
アメリカ美容外科学会 会員
アメリカ形成外科学会 会員
日本臨床形成美容外科医会 理事
広島県出身
『老けたといわれたらここをチェック 女、35歳からの輝き方』(ナイスデイ・ブックス)
『美容外科に行く前に読む本 信頼できる医者のかかり方』(ベストセラーズ) など。