美容医療ニュース
美への欲望につけこみ高額な課金、死亡事故も 専門医は「過剰営業」を懸念

1.コロナ禍とSNSの台頭で美容医療市場が拡大
2.一部のクリニックでは収益優先の体質が広がる
3.SNSでの誇大広告も散見される

「美容整形に1000万円課金しました」「全身整形済みです」──。

今、SNS上では、自身の美容医療体験や施術費用を赤裸々に公開する一般ユーザーの投稿が増えている。美容医療は、かつて限られた層だけが受ける特殊な医療だったが、2020年以降、市場は拡大の一途をたどり、矢野経済研究所(東京・中央)の推計では、わずか数年で1.6倍にまで成長し、24年には6310億円に達した。

なぜ、これほど短期間で市場が膨らんだのか。背景には、新型コロナウイルス禍とSNSの台頭という2つの追い風がある。20年以降のコロナ禍は、「マスクで顔を隠せる」「在宅勤務でダウンタイム(施術によって傷ついた細胞が修復するまでの期間)を取りやすい」という条件が重なり、美容医療にとって“特需”をもたらした。

さらに、施術のビフォー・アフターや費用を一般ユーザーが次々とSNSに投稿するようになり、美容医療は一部の芸能人や富裕層のものから、身近な消費行動へとイメージが書き換えられた。ビフォー・アフターの画像や体験談がタイムラインに流れ込むことで、これまで興味はありつつも踏み出せなかった層の心理的ハードルが大きく下がったのだ。

カウンセラー主導で「数万円から」が数十万円に
 だが、市場が急拡大した一方で、医療の質を担保すべき指導・教育体制はその拡大のスピードに追いついていない。施術の裾野が一気に広がり、経験の浅い医師やスタッフが大量に流入。十分な研さんを積まないまま現場に立つケースも増え、医療の質よりも効率や売り上げを優先する運営が目立つようになった。

 本来は診療の根幹であるべき医師の診察すら形骸化し、施術の方針が“営業主導”で決まるケースも少なくない。その典型が、美容クリニックに常駐するカウンセラーによるアップセル(客単価の向上)だ。

(2025年12月23日 日経ビジネスより転載)