美容医療ニュース

10代から80代まで幅広い層が苦しんでいる
ヒアルロン酸注入後に皮膚が壊死した女性
(https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/t/amd-img/20250918-00000005-friday-000-1-view.jpg?exp=10800&fmt=webp)

まずは上の写真を見ていただきたい。交通事故の被害者のように見えるこの女性の痛々しい傷は「美容整形の後遺症によるもの」である。実際に彼女の後遺症の治療を行った日本医科大学付属病院・美容整形後遺症外来には、日々多くの患者が相談に訪れる。その最前線に立っている形成外科専門医の朝日林太郎医師が解説する。

「これはヒアルロン酸の注入後の後遺症です。ヒアルロン酸はシワやたるみ改善に使われる人気の治療ですが、まれに血管塞栓という合併症が起こります。ヒアルロン酸が血管に入り、血流を遮断してしまっている状態で、失明や皮膚の壊死など重大な合併症が生じることがあります」
近年、美容医療が爆発的に広がっている。インフルエンサーが堂々と「整形告白」をし、SNSにはキラキラした美容医師の広告があふれる。気軽に美容医療を受ける人が増える一方で、後遺症や医療事故に苦しむ人々も増えているのだ。
朝日医師は「患者数はここ5年で5倍以上に増えています」と言う。
「10代から80代まで幅広い。まぶたが閉じなくなった、鼻が変形した、脂肪吸引後のしびれや慢性痛、注射による壊死……。簡単だといわれている治療や手術で失敗や合併症が起きることもあり、パターン化ができないのが美容整形後遺症の難しいところです。
本来なら、美容医療を受けたクリニックで治療してもらうのが一番いいと思いますが、なかなかそうもいかない。患者さんは悩んだ末に私たちの外来にたどり着きます。受け皿にならざるを得ないという現状です」(以下、「」内はすべて朝日医師)
一見すると新しい医療分野のように思われるが、実は美容後遺症外来には長い積み重ねがある。
「日本医科大学病院では30年ほど前から形成外科の一部として存在し、15年前に専門外来として特化しました。2020年から私が責任者となり、全国から寄せられる相談に応じています。美容整形後遺症外来は命に直結する急性期ではなく、慢性的な不調が続く患者が対象となります。
患者の多くが手術や施術から2~3年が経過した方です。美容整形を担当した医師に『そのうちよくなる』と言われ、結局改善しないまま苦しみ、私たちのところに相談に来る。そんな患者さんが増えています」
後遺症治療を進めるうえで、元の執刀医と連絡を取ることは欠かせないが、そんな初歩的なところにも「問題がある」という。
「もちろん患者さんの同意を得てですが、できる限り手術を担当した先生に確認を取るようにしています。ただ、実際には診療情報をなかなか開示してくれないクリニックが多いというのが現状です」
医師法では、正当な理由がない限り診療情報は開示されるべきとされている。
「透明性は重要です。しかし、記録が残っていなかったり、記録とはまったく違う処置がされていたりします。ですから、情報開示の仕組みが整えばすべて解決、という単純な話ではありません。美容整形後遺症治療では、患者の状態を見極め、患者ごとに最適な対応をとることが最も重要になります」


◆「イレギュラー」に対応できない医師
美容整形の合併症は、時に命を奪うこともある。実際、過去に重大事故が繰り返されてきた。

  • ’09年・東京都豊島区の美容整形外科
    70歳女性が腹部脂肪吸引を受け、吸引管が腸を損傷。術後に死亡。医師は業務上過失致死罪で有罪判決。
  • ’11年・東京都中央区の総合病院
    鼻の整形を受けた30代女性が術後の誤挿管で植物状態に。約2年後に死亡し、東京高裁が病院に賠償を命じた。
  • ’23年・大阪府大阪市の美容クリニック
    48歳男性が顔の脂肪吸引で出血。適切な処置が行われず翌日死亡。担当医は業務上過失致死で書類送検。
    「稀ではありますが、命に関わるようなケースもあります。形成専門医の資格もない、経験値が少ない医師がイレギュラーなケースに対応できず、事態を悪化させてしまうこともあります。
    緊急性が高い場合は後遺症外来とは別の枠組みで美容救急が必要です。当院では春山記念病院などの医療機関と連携し、“一分一秒を争うような治療介入が必要な患者を確実に拾い上げる体制”を整えています」
    形成専門医の資格を持たず経験値が少ない医師といえば、「直美」が頭に浮かぶ。直美とは、初期研修を終えただけで美容医療に飛び込む医師のことだ。しかし、初期研修はあくまで土台作りに過ぎず、医師としての力を養うのは後期研修である。
    美容医療は本来、形成外科をはじめとする専門領域に位置付けられ、解剖学や外科的手技、合併症への対応など高度な専門知識が求められるのだが、重要な後期研修を経ずに美容整形に携わる医師がいるのである。患者にとって重大なリスクと言わざるを得ない。
    朝日医師は「直美が悪いかどうかというのは難しいのですが、問題の一つとして“イレギュラーなケースへの対応に弱い”というのは明確にあります」と言う。
    「本来ならイレギュラーなケースが出たときは、他の病院に紹介する、あるいは専門医に相談してもらえればいいのですが、そうせずに安易なタッチアップーー修正を試みて、かえって状況を悪化させてしまうケースが少なくありません」
    直美に対する研修制度の整備が必要では、という声もある。
    「制度で縛るのは非常に簡単で一つの方法ではあるんですけど、問題はもっと本質的なところにあると思います。“形成専門医の資格を持っていることは自分にとっても患者さんにとっても非常にプラスになる”ということを若い医師に私たち先輩がきちんと伝えきれていないのが問題なんじゃないかと考えています」
    そう考えるようになった背景に、これまでの朝日医師の歩みがある。
    「私は強い志があって美容後遺症外来を始めたわけではありません。もともと、私のキャリアの中心は熱傷や外傷などの急性期外科。一般急性外科の医師として、普通の地域病院で働くつもりでした。それが、前任の責任医師が退くことになり、私が引き継ぐ形で美容後遺症外来を担当することになったのです。
    いわば医局の人事でこの世界に入ったのですが、現場で患者と向き合ううちに“これはまさに今、世の中に求められている仕事だ”と強く感じるようになりました。美容医療はサービス業の側面もあります。うまくいけば患者さんはとても幸せになりますが、トラブルが起これば苦しみ続けることになる。美容整形後遺症外来は重要な分野だと思っています」
    だが、その一方で「後継者育成のハードルはかなり高い」という。経験、専門性、そして収益面での難しさから、簡単に担える医師はほとんどいないからだ。
    近年、美容医療の広告やSNSで「センスのある医師」という言葉が頻繁に使われるが、朝日医師は「センスと腕は異なる」と断言する。
    「動画で手術を学んでコピーできる器用な医師はいますし、それをセンスと呼んでいるのだと思います。ただ、手術は100人やれば100人同じ結果になるわけではありません。合併症は一定の確率で必ず起こります。そこからどうリカバーするかが大事であって、決してセンスだけで解決できるものではない」
    医療ミスや美容整形後遺症に遭わないため、我々ができることはあるか。
    「大事なのは執刀医の経歴や資格をしっかり確認し、その医師が術後トラブルにも誠実に対応してくれるかを見極めること。信頼できる医師ほど『自分では限界がある』という正しいジャッジができる」
    美容医療は華やかな成功例だけで成り立ってはいない。
    日本が「美容大国」となった今こそ、美容整形後遺症外来や美容救急の整備、そして直美など若い医師を正しく導く教育体制が求められている。

(2025年9月18日 Yahoo!ニュースより転載)

健康被害が相次ぐ美容医療を巡り、厚生労働省が違法の疑いがある行為を具体的に挙げ、適切に指導するよう求める通知を各都道府県などに出したことが14日、分かった。無資格者による医療方針の決定や、メールやチャットに限った不十分な診断などを挙げた。

美容医療に関する相談は増加傾向にあるが、違法性の線引きや、保健所による立ち入り検査の可否判断が難しいとの指摘があった。法的根拠を明示することで指導体制の強化につなげたい考えだ。

美容医療はエステサロンなどと比べて大きな効果が期待できる一方、医療行為に当たるため、医師や看護師などの資格が必要だ。

美容医療を巡る相談件数は年々増加し、2023年度の国民生活センターなどへの相談は5千件超。厚労省の検討会では「医師の診察前に治療内容が決まり契約した」「医師ではない無資格者の施術だった」などの相談が報告された。

美容医療の多くは自由診療で行われ、行政による指導・監査が可能な保険診療に比べ実態が見えづらいとの指摘がある。保健所には美容医療に詳しい職員が少なく、医療行為の適否の判断が難しいとの声や、医師法で義務づけられた診療記録の作成・保存が不十分で、問題事例の確認が困難な医療機関もあるとの意見も上がっていた。

通知では、医師免許のない無資格者が「カウンセラー」と称し、医療脱毛や高密度焦点式超音波(HIFU、ハイフ)などの治療方針を決めて施術することは医師法違反と明示。医師の指示がない看護師らのみの治療を禁じ、治療行為の料金設定の説明という体裁であっても医師以外が治療方針などを決めてはならないとした。

メールやチャットのみの診断では不十分な場合があり、医師法違反の恐れがあると解釈。記録不備がある場合も違反に該当するとした。こうした医師法などの違反が疑われる事案があった場合は、保健所が医療法に基づき立ち入り検査できると示した。

(2025年9月15日 2:00 日本経済新聞より転載)

脱毛サロンの業界大手「ミュゼプラチナム」で元従業員らの給与が未払いになっている問題で東京地方裁判所は18日、運営していた会社の破産手続きを開始する決定を出しました。債権者は顧客や従業員など123万人余り、負債額はおよそ260億円にのぼるということです。

全国におよそ170か所の脱毛サロンを展開する業界大手の「ミュゼプラチナム」はことし3月下旬から経営体制の移行などを理由にすべての店舗で休業し、一部の従業員らはことし5月、数か月分の給与が支払われておらず「運営会社には多額の債務が存在し支払い不能の状態にある」などとして、東京地方裁判所に運営会社「MPH」の破産手続き開始の申し立てを行いました。

これについて裁判所は18日午後、破産手続きを開始する決定を出しました。

現在の運営会社「ミュゼ・メディア・HD」によりますと、債権者は顧客や従業員などおよそ123万3000人、負債額はおよそ260億円にのぼるということです。

今後は選任された破産管財人の弁護士が資産状況の調査などを行うことになります。

決定を受けて「ミュゼ・メディア・HD」は「今後は破産管財人の管理のもと法令に従い誠実に手続きを進めてまいります。手続きの進捗や必要な情報につきましては随時適切に開示してまいります」などとコメントしています。

(2025年8月18日 22時05分 NHK WEBより転載)

 韓国政府は外国人観光客に適用していた美容整形などの医療手術にかかる税金の還付措置を今年で終了させる方針を決めました。

 現在、韓国では外国人が美容クリニックなど特定の医療機関で鼻の整形手術や瞼の二重手術など美容目的の医療を受けた場合、手術費の1割を還付で受けられます。

 この特例措置は医療観光を活性化させる目的で2016年から導入されていましたが、医療目的の外国人観光客が持続的に増えていることから、韓国政府は今後はこの措置を延長しない方針を決めました。

 今後、国会で議論され、議決されれば特例措置は年末にも終了となります。

2025年8月1日 18:01 テレ朝NEWSより転載)

 医療法人社団慶結会〈TDB企業コード:621001310、資産の総額0円(債務超過額金48万7710円)、東京都渋谷区神宮前3-42-2、理事長岩嵜宏俊氏〉は、6月30日に東京地裁より破産手続き開始決定を受けた。

 破産管財人には、荻山真理子弁護士(功記総合法律事務所、東京都中央区日本橋人形町3-6-7、電話03-5614-0201)が選任されている。

 当社は、2004年(平成16年)1月に設立された美容クリニックの運営業者。当初は千葉県で歯科クリニックを運営していたが、以降数度の理事長交代を経て、2021年より「レイズクリニック青山」として、東京都渋谷区で美容皮膚科や美容内科を手がけていた。「HIFU」(ドット・リニア)やCO2レーザー、ヒアルロン酸注入などを行い、2022年8月期には年収入高約6800万円を計上していた。

 しかし、「レイズクリニック青山」としての業歴は浅く業績は低調に推移。従前より累損が大きくなっていたなか、同期末では最終赤字となり債務超過となっていた。

 債権者数は300名を超える可能性があり、負債は現在調査中。

(2025年7月2日 10:23 Yahoo!NEWSより転載)

~2024年「美容クリニック」の動向調査 ~

 全国の主な美容クリニック248法人の2024年の売上高は3,137億5,900万円(前期比29.9%増)、利益は82億6,500万円(同22.6%増)と好調だった。コロナ禍を経ても市場は拡大をたどり、美容医療が社会に定着してきたようだ。ただ、2024年は大手の倒産が相次ぎ、前期に比べて減収や赤字法人の比率も高まっている。性別を問わず需要が広がるなか、市場は踊り場に差し掛かった可能性も出てきた。

全国の医療法人のうち、事業内容に「美容整形」「美容クリニック」を含む248法人の売上高は、2022年の2,119億6,700万円から2024年は3,137億5,900万円へ約1.5倍に伸びた。マスク生活が長かったコロナ禍を経て、美容への自己投資がより身近なものとなり、SNSマーケティングなども業界の追い風となっている。

利益は、2021年の61億3,600万円から2024年は82億6,500万円に増えている。市場自体が成長過程で、売上高5億円未満の中小・零細法人が73.7%を占め、施術単価や稼働率の低下が収益に直結するだけに経営戦略が重要になっている。

なお、2024年の美容クリニックの「休廃業・解散」は3件、倒産は4件で合計7件を数えた。これは過去10年で最多で、今後も需要が見込まれる市場とはいえ、重い投資負担や運営方針が不明確な事業者は淘汰される可能性が高い。

広告経費と集客バランスが不均衡なクリニックや特定施術に特化した単一型クリニックは、流行に左右され、多様さを増す顧客ニーズに対応できないリスクも高い。「休廃業・解散」や倒産の増加は、こうしたクリニックの淘汰を示すもので、業界の健全化に向けた警鐘とも見ることができる。今後は早期の経営診断と資金繰り対策の一方で、オンライン診療、化粧品販売など幅を広げた経営が必要な局面に入っていくだろう。

※ 本調査は、東京商工リサーチの企業データベース(約440万社)から、事業内容に「美容整形」、「美容クリニック」を含む 法人を抽出。2024年の業績(2024年1月~2024年12月期)を最新期とし、3期連続で業績が判明した248社を分析した。

(東京商工リサーチより転載 2025年6月26日 12時55分)

幅広い年代で美容医療のニーズが高まる一方、健康被害などのトラブルも増えている。施術の結果に納得できなかったり、合併症や後遺症に悩んだり。美容医療にも詳しい皮膚科医は「リスクや副作用についても知り、施術を受けるか慎重に判断してほしい」と注意を呼びかける。(斉藤和音)

名古屋市の40代の女性会社員は4月、目の下の脂肪を除去してくまを取る施術を受けた。交流サイト(SNS)で症例を紹介する動画を見たのがきっかけだ。投稿者は全国展開する大手美容外科クリニック。目の下の膨らみが悩みだった女性は軽い気持ちで市内のクリニックを訪れた。

医師ではないカウンセラーの女性が施術の希望を聞き取った。「今日なら安くできる」と15万円が10万円に。医師と顔を合わせることなく契約書に署名し、施術を受けた。

 再来院した5月、鼻の悩みをカウンセラーに漏らした。ある注射で鼻の広がりが解消できるとしていたが「あなたには効果がない」と15万円の別の施術を勧められた。迷ったが決断。施術内容やリスクは知らされなかった。

 術後まもなく異変が。鼻先が赤く腫れ、黒い物が飛び出てタオルで触れられないほど痛む。クリニック側は「様子見で問題ない」と対応を拒んだ。別の医療機関で、黒い物は糸で、感染の恐れから早急な除去を勧められた。目元も脂肪の取り残しがあり、明らかな左右差を指摘された。

 クリニック側はその後も「お金さえ返せば満足するのか」と診察を拒否し、女性は精神的にも追い詰められた。糸は他院で除去したが、鼻の傷痕や皮膚の違和感、目元の左右差は残る。鼻の広がりは改善しなかった。女性は「カウンセリングでコンプレックスを次々と指摘され、不安をあおられた。もっと情報収集すべきだった」と悔やむ。

 厚生労働省は関係学会の調査を分析。52の医療機関・チェーンの施術数は2019年に123万件だったが、22年には約3倍の373万件に増えている。国民生活センターなどへの相談も急増。24年度は1万700件あり、過去10年で最多を更新した。このうち、健康被害の訴えは898件に上る。しみ取りのレーザーで顔中をやけどした(57歳女性)、しわやたるみを解消する施術で顔のしびれや舌の違和感が残る(50代女性)という被害もあった。

 厚労省は昨年の検討会で美容クリニックなどに勤める医師の専門医資格の有無や安全管理の状況を年1回報告させることなどを決めた。

 「関連する皮膚科や形成外科といった診療の経験が少ない医師の参入が増えている」。日本皮膚科学会理事で、愛知医科大の渡辺大輔教授は、トラブル多発の背景を指摘する。大学卒業後の初期研修を終え、すぐに美容医療に進む「直美(ちょくび)」と呼ばれる医師も増加している。「SNSをうのみにせず、冷静に施術内容や医師の経歴などを調べて」。日本美容医療協会のホームページでは、情報や寄せられた相談内容を公開している。

(東京新聞より一部転載 2025年6月26日 07時43分)

「HIFU(ハイフ)」と呼ばれる技術を使った美容の施術でやけどを負ったとして、20代の女性がエステサロンを経営する会社に賠償を求めた裁判で、会社が謝罪して解決金を支払うことを条件に17日、和解が成立しました。

都内の20代の女性は、エステ店で医師免許を持たない人から「HIFU」の施術を受け、左足にやけどを負ったとして、経営する会社に慰謝料など400万円余りを求める訴えを去年、起こしました。

女性側によりますと、17日、東京地方裁判所で協議が行われ、会社が施術でミスがあったことを認めて謝罪することや、解決金を支払うことなどで和解が成立したということです。

「HIFU」は専用の機械で身体に超音波をあてて加熱する技術で、しわの改善などの効果がある一方、やけどや急性白内障などになったという相談も相次ぎ、厚生労働省は去年6月、都道府県に対し、施術には医師免許が必要だとする通知を出していました。

女性の弁護士によりますと、和解条項の中で裁判所は、医師以外による「HIFU」は医師法違反で、民事上の慰謝料の対象になるという見解を示したということです。

女性は都内で開かれた会見で、「やけどの痕が現在も残っているので、完全に気持ちが晴れたとはいえないが、今後、同じような被害が繰り返されないことを願います」と話していました。

(NHK NEWS WEBより転載 2025年6月17日 14時57分)

二重手術や脂肪吸引など美容医療のニーズが高まる一方で、一部では、合併症や後遺症などの健康被害も起きています。そうした中、東京・新宿区の病院が6月から、美容医療のトラブルに特化した救急外来を本格的に開始しました。

美容医療をめぐっては全国の消費生活センターなどに寄せられた健康被害の相談が、昨年度822件と、5年前の1.7倍に増加しています。

こうした中、東京 新宿区で24時間、救急患者を受け入れている春山記念病院は、患者を迅速に治療するため、6月から、美容医療のトラブルに特化した救急外来を本格的に開始しました。

病院はこれまでも、美容医療による合併症などの緊急手術を行ってきましたが、どんな施術を受けたのか分からず、処置に苦慮するケースも少なくなかったといいます。

このため6月には、都内の美容クリニックと覚書を交わし、クリニックで施術を受けた患者を病院が受け入れる場合は、施術内容など、治療に必要な情報を共有していくことになりました。

治療は公的な医療保険が適用されない自由診療で行われます。

美容医療の健康被害をめぐっては、厚生労働省の検討会も去年、美容クリニックと、合併症などに対応できる医療機関の連携を深める必要性を指摘しています。

覚書を交わした美容クリニックの深堀純也理事長は「これまで施術後の死亡事故や重篤な後遺症は起きていないが、今後、予期せぬ合併症が起こる可能性もあり、安心して美容医療を提供するうえで、救急病院と連携できるのは心強くありがたい」と話していました。

病院の事業責任者の櫻井裕基 医師は「一刻一秒を争う事例があるため協定を事前に結ぶ取り組みを始めた。今後はほかのクリニックとの連携も広げていきたい」と話していました。

合併症や後遺症で緊急手術も 連携の必要性は

美容クリニックで施術を受けた後、合併症や後遺症を患い、緊急手術が必要になる患者は後を絶ちません。

東京 新宿区の春山記念病院では、5月にも都内の美容クリニックであご下の脂肪吸引を受けた40代の男性患者が救急搬送されてきました。

男性は施術後に、首に血腫が出来て気道が圧迫されていました。

救急搬送にはクリニックの医師が同行し、病院側に施術内容を速やかに伝えたため、血腫の原因が首の血管からの出血であることが分かり、すぐに、血管を縛って止血する手術が行われました。

手術は1時間余りにおよびましたが無事成功し、男性は翌日には退院でき、その後の経過も順調だということです。

男性は「とても怖かったです。救急病院がなければ死んでいたかもしれず、本当に感謝の気持ちでいっぱいです」と話しています。

病院の事業責任者の櫻井裕基 医師は「去年には大阪で同じような合併症が起きて亡くなった人もいて、もう命を落とす人を出してはならないと感じ搬送を受け入れた。今回はクリニックの医師から施術内容を詳しく聞けたので迅速に処置できたが、重篤なケースでも施術内容が分からず、処置が遅れてしまうケースが出てきている。救急医療を担う病院と美容クリニックとの連携は全国で広げていくべきだ」と話しています。

国も対応強化の方針

美容医療で相次ぐ合併症や後遺症について、国も対応を強化する方針です。

厚生労働省は去年8月、美容医療の合併症や後遺症の実態調査を行い、美容医療を提供する417の医療機関と、美容医療でトラブルを経験した600人から回答を得ました。

それによりますと、まず医療機関に健康被害などのトラブルが起きた時の対応を聞いたところ、「マニュアルや研修を用意していない」と答えたところが全体の33.8%に上りました。

また、アフターフォローを行う際に、対応できない施術の修正や後遺症などが発生した場合、連携している医療機関があるか尋ねたところ、35.7%が「ない」と回答しました。

一方、トラブルを経験した患者のうち18.7%の人は、「施術を受けた後、早期に再施術や治療が必要な状況に陥った」と回答しています。

具体的な症状を複数回答で聞いたところ
▽「熱傷」が25%で最も多く
次いで
▽「重度の形態異常」が23.2%
▽「皮膚のえ死・潰瘍」が22.3%となったほか
▽「消化器障害」が3.6%
▽「骨折」や「出血多量」が2.7%などとなっています。

厚生労働省の検討会は去年、報告書をまとめ、合併症や後遺症が起きた時に、クリニックが対応できない、あるいは、対応を拒絶したり、ほかの病院の紹介も行わないといった事例が見られると指摘しました。

検討会は患者が急変した時の体制や仕組みが十分でないとして、美容クリニックなどに対応を強化するよう求めています。

具体的には、合併症などの問題が起きた時、患者が相談できる連絡先を毎年、都道府県などに報告し、行政側がそのリストを公表することも検討すべきだとしています。

また、緊急手術を担ってもらう病院と、事前に合意を交わしておくなどの連携を進め、関係学会にはその具体的な対応方法をまとめたガイドラインを策定するよう求めています。

国は今後、報告書の内容を反映した医療法の改正を目指すことにしています。

(NHK NEWS WEBより転載 2025年6月15日 6時59分)

アジア太平洋地域は、文化的シフト、技術の進歩、地元映画産業の強力な影響力によって、活況を呈する世界の美容医療市場の最前線にある。

アジア太平洋地域の美容医療市場は、2025~2033年の予測期間中に13.61%のCAGRで成長し、2024年の214.7億米ドルから2033年には654.2億米ドルの市場価値に達すると予測されています。

アジア太平洋地域の美容医療市場は、経済の繁栄、技術革新、そして美容と健康に対する文化的意識の変化を背景に、力強い成長が見込まれています。世界銀行の報告によると、2022年時点でこの地域の中流階級人口は20億人を超え、美容治療に投資できる経済的余裕のある消費者基盤が確固たるものとなっています。さらに、都市化の傾向により、現在23億人が都市部に居住しており(国連、2023年)、クリニックへのアクセスや世界的な美容基準への露出が高まっています。

技術の進歩が市場拡大を加速させています。国際美容外科学会(ISAPS)は、2022年にはアジア太平洋地域が世界の非侵襲的手術の40%を占めると指摘し、この地域における革新的な治療法の急速な導入を浮き彫りにしました。韓国は依然として最前線に立っており、保健福祉省の報告によると、2022年には120万件以上の美容手術が実施され、国民経済に約100億ドルの貢献を果たしました。日本の経済産業省も、2022年の美容医療分野における20億ドルの成長を強調しました。

ソーシャルメディアの影響と人口動態の変化は、美容医療市場の様相を大きく変えつつあります。中国インターネットネットワーク情報センターによると、2023年には中国のインターネット利用者は10億人を超え、そのうち8億5000万人がソーシャルメディアプラットフォームでアクティブに活動しています。こうしたデジタルエンゲージメントは、特に若年層において、美容医療への認知度と受容度を高めています。中国国家統計局によると、2023年には美容医療の顧客のうち20~35歳が60%を占めました。同様に、オーストラリア統計局は、2022年にはミレニアル世代が美容医療の患者の55%を占めたと報告しています。

経済予測は明るい見通しを裏付けています。アジア開発銀行は、アジアのGDPが2023年に4.8%成長し、消費者の購買力が高まると予測しています。ヘルスケアへの投資増加も注目に値し、インド政府は2023年にヘルスケアに110億ドルを割り当てており、その一部は美容医療インフラの整備を支援しています。しかし、規制の不均衡や安全性への懸念など、依然として課題が残っています。世界保健機関(WHO)は、2023年に東南アジアで美容施術に関連する有害事象が6,000件以上発生したと報告しており、その多くは無資格の施術者によるものです。これらの問題への対応は、持続的な成長と消費者の信頼維持に不可欠です。この成長は、消費者需要の高まり、技術革新、そして外見と健康を重視する社会の変化によって支えられています。

■非侵襲的処置はアジア太平洋地域の美容医療の成長の礎であり、64%以上の市場シェアを占める見込み

アジア太平洋地域の美容医療市場を牽引しているのは、非侵襲的施術であり、短期間で効果が得られ、回復期間も最小限に抑えられます。ボツリヌス毒素、非外科的鼻形成術、皮膚充填剤、レーザー皮膚再生、ケミカルピーリングなどの施術が主流で、若々しく完璧な肌への文化的関心の高まりに応えています。過去1年間で、大都市圏だけでも、この需要に応えるため、数百ものクリニックが新規にオープンしました。最先端のレーザーシステムなどの高度な機器の導入により、治療効果が大幅に向上し、これらの施術を予防策と捉える20代から30代前半の若い顧客を引きつけています。消費者は平均して年間1,000ドルから5,000ドルを非侵襲的施術に費やしており、この分野の市場価値は2023年末までに150億ドルを超えると予測されています。美容アプリやソーシャルメディアを通じて美容医療が標準化されたことで、認知度と導入がさらに高まっています。

■30~45歳層:美容医療市場で最も収益性の高いセグメントが、市場シェアの約43%を獲得する見込み

30~45歳の年齢層は、アジア太平洋地域において美容医療の最大の消費者であり、その背景としては、職業的な向上心、加齢への不安、そして経済的安定が挙げられます。この年齢層の人々は、若々しい外見の維持を優先するため、しわや皮膚のたるみといった老化の初期兆候に対処するための治療を求める傾向が強いです。美容処置はセルフケアに欠かせないものと考えられているため、クリニックはこの年齢層から毎年数千人の新規顧客を獲得していると報告しています。年収は3万ドルから10万ドル以上に及び、この年齢層の人々は毎年約2,000ドルから7,000ドルを治療に費やしています。また、この年齢層は最新の技術革新を求めるため、クリニックはプレミアムテクノロジーへの投資を迫られています。ボトックスやフィラーといった予防的治療は、外見を改善することでキャリアアップや社会的な自信につながるという認識から、この年齢層ではますます標準的な治療法になりつつあります。

■地域全体で美容施術の圧倒的な需要を牽引する女性たち

アジア太平洋地域の美容医療市場は女性が圧倒的多数を占めており、クリニックによると顧客の87.93%以上が女性です。文化的な美の規範と、若々しく洗練された外見を維持することへの社会的な重視が、この優位性に大きく影響しています。TikTokやInstagramなどのソーシャルメディアプラットフォームの普及により、女性は常に理想的な美の基準にさらされているため、需要が拡大しています。2023年の調査では、美容アプリやフィルターにより、女性は現実の生活でこれらの強化されたビジュアルを反映した治療法を求める傾向がさらに強まっていることが明らかになっています。この地域の女性は、美容処置に年間1,500ドルから6,000ドルを費やしており、私生活と仕事の両方で重要な投資と見ています。さらに、地元の有名人やインフルエンサーからの推薦により美容医療が標準化され、クリニックは著名人の推薦を受けて予約が急増したと報告しています。

(NEWSCASTより一部転載 2025年4月30日 10時00分)