アジア太平洋地域は、文化的シフト、技術の進歩、地元映画産業の強力な影響力によって、活況を呈する世界の美容医療市場の最前線にある。
アジア太平洋地域の美容医療市場は、2025~2033年の予測期間中に13.61%のCAGRで成長し、2024年の214.7億米ドルから2033年には654.2億米ドルの市場価値に達すると予測されています。
アジア太平洋地域の美容医療市場は、経済の繁栄、技術革新、そして美容と健康に対する文化的意識の変化を背景に、力強い成長が見込まれています。世界銀行の報告によると、2022年時点でこの地域の中流階級人口は20億人を超え、美容治療に投資できる経済的余裕のある消費者基盤が確固たるものとなっています。さらに、都市化の傾向により、現在23億人が都市部に居住しており(国連、2023年)、クリニックへのアクセスや世界的な美容基準への露出が高まっています。
技術の進歩が市場拡大を加速させています。国際美容外科学会(ISAPS)は、2022年にはアジア太平洋地域が世界の非侵襲的手術の40%を占めると指摘し、この地域における革新的な治療法の急速な導入を浮き彫りにしました。韓国は依然として最前線に立っており、保健福祉省の報告によると、2022年には120万件以上の美容手術が実施され、国民経済に約100億ドルの貢献を果たしました。日本の経済産業省も、2022年の美容医療分野における20億ドルの成長を強調しました。
ソーシャルメディアの影響と人口動態の変化は、美容医療市場の様相を大きく変えつつあります。中国インターネットネットワーク情報センターによると、2023年には中国のインターネット利用者は10億人を超え、そのうち8億5000万人がソーシャルメディアプラットフォームでアクティブに活動しています。こうしたデジタルエンゲージメントは、特に若年層において、美容医療への認知度と受容度を高めています。中国国家統計局によると、2023年には美容医療の顧客のうち20~35歳が60%を占めました。同様に、オーストラリア統計局は、2022年にはミレニアル世代が美容医療の患者の55%を占めたと報告しています。
経済予測は明るい見通しを裏付けています。アジア開発銀行は、アジアのGDPが2023年に4.8%成長し、消費者の購買力が高まると予測しています。ヘルスケアへの投資増加も注目に値し、インド政府は2023年にヘルスケアに110億ドルを割り当てており、その一部は美容医療インフラの整備を支援しています。しかし、規制の不均衡や安全性への懸念など、依然として課題が残っています。世界保健機関(WHO)は、2023年に東南アジアで美容施術に関連する有害事象が6,000件以上発生したと報告しており、その多くは無資格の施術者によるものです。これらの問題への対応は、持続的な成長と消費者の信頼維持に不可欠です。この成長は、消費者需要の高まり、技術革新、そして外見と健康を重視する社会の変化によって支えられています。
■非侵襲的処置はアジア太平洋地域の美容医療の成長の礎であり、64%以上の市場シェアを占める見込み
アジア太平洋地域の美容医療市場を牽引しているのは、非侵襲的施術であり、短期間で効果が得られ、回復期間も最小限に抑えられます。ボツリヌス毒素、非外科的鼻形成術、皮膚充填剤、レーザー皮膚再生、ケミカルピーリングなどの施術が主流で、若々しく完璧な肌への文化的関心の高まりに応えています。過去1年間で、大都市圏だけでも、この需要に応えるため、数百ものクリニックが新規にオープンしました。最先端のレーザーシステムなどの高度な機器の導入により、治療効果が大幅に向上し、これらの施術を予防策と捉える20代から30代前半の若い顧客を引きつけています。消費者は平均して年間1,000ドルから5,000ドルを非侵襲的施術に費やしており、この分野の市場価値は2023年末までに150億ドルを超えると予測されています。美容アプリやソーシャルメディアを通じて美容医療が標準化されたことで、認知度と導入がさらに高まっています。
■30~45歳層:美容医療市場で最も収益性の高いセグメントが、市場シェアの約43%を獲得する見込み
30~45歳の年齢層は、アジア太平洋地域において美容医療の最大の消費者であり、その背景としては、職業的な向上心、加齢への不安、そして経済的安定が挙げられます。この年齢層の人々は、若々しい外見の維持を優先するため、しわや皮膚のたるみといった老化の初期兆候に対処するための治療を求める傾向が強いです。美容処置はセルフケアに欠かせないものと考えられているため、クリニックはこの年齢層から毎年数千人の新規顧客を獲得していると報告しています。年収は3万ドルから10万ドル以上に及び、この年齢層の人々は毎年約2,000ドルから7,000ドルを治療に費やしています。また、この年齢層は最新の技術革新を求めるため、クリニックはプレミアムテクノロジーへの投資を迫られています。ボトックスやフィラーといった予防的治療は、外見を改善することでキャリアアップや社会的な自信につながるという認識から、この年齢層ではますます標準的な治療法になりつつあります。
■地域全体で美容施術の圧倒的な需要を牽引する女性たち
アジア太平洋地域の美容医療市場は女性が圧倒的多数を占めており、クリニックによると顧客の87.93%以上が女性です。文化的な美の規範と、若々しく洗練された外見を維持することへの社会的な重視が、この優位性に大きく影響しています。TikTokやInstagramなどのソーシャルメディアプラットフォームの普及により、女性は常に理想的な美の基準にさらされているため、需要が拡大しています。2023年の調査では、美容アプリやフィルターにより、女性は現実の生活でこれらの強化されたビジュアルを反映した治療法を求める傾向がさらに強まっていることが明らかになっています。この地域の女性は、美容処置に年間1,500ドルから6,000ドルを費やしており、私生活と仕事の両方で重要な投資と見ています。さらに、地元の有名人やインフルエンサーからの推薦により美容医療が標準化され、クリニックは著名人の推薦を受けて予約が急増したと報告しています。
(NEWSCASTより一部転載 2025年4月30日 10時00分)
美容医療による健康被害などのトラブルが増加する中、NHKが合併症や後遺症が生じた患者にアンケート調査を実施した結果、施術を受けた医療機関から事前にリスクの説明がなかったという人や、治療を断られたという人が見られました。
美容医療は、幅広い世代でニーズが高まっている一方、一部のクリニックで施術を受けた人が合併症や後遺症に悩むケースも起きています。
全国の消費生活センターなどに寄せられた美容医療によるけがや病気などの健康被害のトラブル相談は、2023年度に901件と、4年間で2倍近くに増えています。
こうした中、NHKは3月、美容医療の後遺症を治療する医療機関や、日本美容外科学会=JSAPSに所属する医師などを通じて、合併症や後遺症を経験した患者にアンケート調査を行い、27人から回答を得ました。
このうち、施術を受ける前に後遺症などのリスクについて説明を受けたか聞いたところ、21人が「受けていない」と回答し、詳しいリスクを知らないまま施術を受けた人がいることが分かりました。
また、15人は施術を受けた医療機関に治療の相談をしたが断られたとしています。
この中には「『これ以上は何もできない』と追い返された」という人や、「クレーマー扱いされた」という人もいて、一部の医療機関で、合併症や後遺症への対応が十分に取られていない実情も見られました。
また施術を受けた所とは別の医療機関に相談したものの、治療を断られた経験があるという人は15人いました。
アンケートの結果について日本美容外科学会=JSAPSの原岡剛一理事は、「美容医療の業界全体で後遺症などに速やかに対応する体制を進めていく必要がある。美容クリニックなどは、後遺症を訴える患者が出たら責任を持って診療にあたり、高度な治療が必要な場合は、大学病院に紹介状を書くなど迅速に対応すべきだ」と指摘しています。
■後遺症外来では患者急増 5年前と比べ6倍ほどに
美容医療による後遺症などを治療する大学病院では、ここ数年、患者が急増し、担当する医師は「後遺症患者の治療にあたる医療機関をさらに拡大する必要がある」と訴えています。
東京 文京区の日本医科大学付属病院は、美容医療の合併症や後遺症に悩む患者を専門的に受け入れる外来を設置しています。
毎週木曜日に診療が行われ、多い時には1日30人ほどの患者が訪れています。5年前と比べると6倍ほどに増えているといいます。
東京だけでなく、全国各地から幅広い年齢層の人が治療を受けにやってきます。
大阪から訪れた30代の女性は、美容医療をたびたび受け、自信が持てるようになったといいますが、去年、結婚式を前に受けた、あごの下のたるみを引き締める施術で腫れが起き、でこぼこした膨らみが残りました。
女性は外来を受診し膨らみを抑える治療を受けました。
美容後遺症外来の朝日林太郎医師によりますと、最近は、目の下のくまを取るはずだった施術で、傷あとが残るなど医師の技術ミスによるものと見られる事例が、少なくないといいます。
朝日医師は、業界が急拡大する中、経験が浅く技術が不足する医師が出てきているのではないかとした上で、「しっかりと安全対策を行っているクリニックを選ぶことが重要だ。また、後遺症の患者を治療する医師や医療機関は全く足りていない状態で、体制の拡大が急務だ」と話しています。
■後遺症に悩む患者「十分な説明 受けていなかった」
美容医療の後遺症に悩む患者の中には、施術を受ける前に後遺症などのリスクについて、クリニックから十分な説明を受けていなかったと話す人もいます。
都内に住む40代の会社員の女性は、出産した後、職場に復帰する際に、鏡で自分の顔をみてしわが多くなったと感じ、去年、美容クリニックでしわを目立たなくするヒアルロン酸注射を受けました。
その際、クリニックの医師からは、副作用や後遺症などの口頭でのリスクの説明はなかったといいます。
しかし施術の後、ほおやまぶたがたびたび腫れるようになってしまいました。
女性はその後、後遺症外来で治療を受け症状は改善しましたが、現在も薬の服用を続けています。
女性は「クリニックには事前のカウンセリングなどの場で、リスクを詳しく説明してもらいたかったし、私も、もっと考えるべきだったと反省している。国や自治体は美容医療のリスクについてさらに注意喚起をしてもらいたい」と話しています。
■後遺症の治療 医療機関が見つからないケースも
また、美容医療による後遺症が出た患者の中には、治療を受けられる医療機関がなかなか見つからなかったと話す人もいます。
NHKが患者に行ったアンケート調査の自由記述には、クリニックから、「機能障害が出ない限り失敗とは言えず、再手術するなら別途料金が必要だ」と言われたり、「執刀医が退職しているため、受け付けられない」などと断られたりしたというケースが見られました。
アンケートに回答した九州に住む30代の男性は、目の病気の手術をした影響でまぶたの形が崩れ、ことし、美容クリニックで形を整える施術を受けました。しかし、まぶたが引きつって痛みを感じるようになり、見た目も悪化し、外出がしづらくなったといいます。
男性は施術を受けた医師に相談しましたが、「原因が分からないので治療できない」などと言われたといいます。施術代は全額返金されましたが、後遺症を治療できる医療機関は紹介してくれなかったといいます。
男性はその後、治療先を探すため東京など10件の医療機関を回りましたが、対応してくれる所は見つかりませんでした。
紹介状が無かったり、クリニックが作成したカルテに詳しい施術内容が書かれていなかったりして、「後遺症の原因がわからず治療ができない」と言われることが多かったということです。
男性はことし1月に日本医科大学付属病院の後遺症外来を受診しましたが、回復のめどはまだ立っていません。
男性は「クリニックの医師は施術前は親身になって話を聞いてくれたのに、痛みが出たと相談したら、十分に対応してもらえず態度が一変したと感じた。アフターケアも含めての手術だと思っていたので、そこが無いのは無責任だと感じる」と話しています。
■厚労省や学会 対策強化へ
美容医療に関する健康被害の相談が相次ぐ中、厚生労働省は、安全を確保するための対策を強化することにしています。
具体的には、美容医療を行うクリニックなどに対し、年に一度、安全管理を適切に行っているかどうか、都道府県などの自治体に報告するよう義務づける方針です。
また厚生労働省が去年、美容医療を手がけるクリニックなどに行った調査では、後遺症などのトラブルに対応するマニュアルや研修を準備していない所は、33.8%に上っています。
こうした中、美容医療に関係する学会などは、後遺症などのリスクを事前に説明する方法や、アフターケアの体制をどのように整えるかなどをまとめた「ガイドライン」を、今後、策定することにしています。
■専門家「リスクや対応 クリニックの医師に詳しく聞いて」
日本美容外科学会=JSAPSの原岡剛一理事は、後遺症などのトラブルが相次いでいることについて、「美容クリニックの中でも安全対策に力を入れるところはあるが、対応が十分と言えるクリニックは決して多くは無い。まずは自分たちで診療や治療にあたり、大学病院などで高度な治療が必要になった場合は、紹介状を書くなど責任を持って対応すべきだ」と指摘しています。
その上で、美容医療の利用を考えている人に対しては、「どんなリスクが考えられるかや、万が一、合併症や後遺症が起きた時に、どんな対応を取ってもらえるのかを、クリニックの医師に詳しく聞いてほしい。そこで納得が得られなければ、利用を控えることも大切だ」と話しています。
(NHK WEBより転載 2025年3月26日 22時31分)
美容医療のニーズが高まり、クリニックが増加する中、利用客を獲得するため法令に違反する広告が相次いでいるとして、厚生労働省はネットパトロールなどの取り締まりを強化することになりました。
■2023年度 違反広告 362サイトで計2888か所確認
厚生労働省によりますと、脱毛や脂肪吸引などの美容医療のニーズが高まり、美容外科のクリニックの数は、2023年、全国で2016か所と、15年間で2倍以上に増加しています。
こうした中、利用客の獲得競争が激しくなり、インターネット上では、リスクを明記しなかったり、主観的な体験談を載せたりする、法令に違反した広告が相次いで確認されています。
厚生労働省は、美容などの医療広告をチェックする「ネットパトロール」を行っていますが、2023年度には美容医療に関する違反広告が362のサイトであわせて2888か所、確認されたということです。
特に最近はSNSを使って違反広告を投稿するケースが増えていて、厚生労働省はネットパトロールなどの取り締まりを強化することになりました。
具体的には今後、ネットパトロールでチェックするサイトの数をさらに増やすことを検討しているということです。
厚生労働省は、違反広告を見つけた場合、医療機関に通知して修正を促すほか、悪質なケースは自治体に報告して行政処分を検討するなどして、利用者が適切な情報に基づいて医療機関を選択できる環境を整えたいとしています。
また、美容医療の医師で作る学会などでも、今後、業界でガイドラインを策定し、どのクリニックが守っているかを明示できるような仕組みを検討していきたいとしています。
■違反広告 厚労省のネットパトロールの現場は
医療広告について国は、患者が適切な情報に基づいて治療などを受けられるよう、医療法で禁止される内容などを定めていて、さらにガイドラインを策定し、具体的な基準や事例を示しています。
しかし、美容医療のホームページで法令違反の広告が相次いで確認されたことから、厚生労働省は8年前から外部の企業に委託して「ネットパトロール」を行っています。
ガイドラインに違反する疑いのある広告が見つかった場合、医療機関に通知して修正を促すほか、必要な場合は処分権限を持つ自治体に情報提供を行っています。
昨年度には医療広告全体であわせて1098のサイトに6328か所の違反が見つかり、このうち美容に関する内容は半数近くの2888か所と最も多かったということです。
具体的にどのような違反広告があるのか。NHKは今月、厚生労働省のネットパトロール事業の現場を初めて密着取材しました。
そこで見えてきたのは、SNS上での違反広告の増加です。このうち、あるクリニックは、SNS上で、耳にヒアルロン酸を注入して形を変え、小顔効果が得られるという施術について、施術前後の変化を撮影した、いわゆる「ビフォーアフター」の動画を投稿していました。
しかし、施術によってどのように変化するかは一人ひとり異なるため、全員が同じような結果を得られるという誤解を招かないよう、必要な治療内容や費用、それにリスクなどの詳細な説明が必要となります。クリニックの動画にはそれがなく、厚生労働省は修正を促したということです。
また、ビフォーアフター以外にも最近増えているのは、主観に基づく「体験談」を紹介した動画や画像です。
あるクリニックは、二重まぶたの施術を受けたとみられる人が「2日目以降から楽になりました」などと術後の状態を語る動画をSNSに投稿していました。しかし、施術を受けたあとの感想は人によって異なり、主観に基づく体験談の場合、全員が同じ満足感を得られると誤認させるおそれがあるので、認められていません。
厚生労働省によりますと、たとえ医師個人のアカウントで投稿されたものであっても、医師やクリニックの名前などが記載され、利用者を勧誘する内容であれば「医療広告」の規制対象にあたるということです。
こうした違反が次々とSNS上などに投稿されていることを受けて、厚生労働省は取り締まりを強化する方針です。しかし、ネット上に拡散される膨大な量の広告すべてをパトロールや行政処分だけでなくすのは難しいといいます。
厚生労働省医政局総務課の加藤拓馬 保健医療技術調整官は「そもそも医療は人体や健康に大きな影響を与えるので、一般的な広告とは異なるさまざまなルールを規定しているが、そうした中で違反広告が相次いでいるのは大きな問題だ。どんな広告が適切で何が違反なのかを広く知ってもらうことが大切で、国としてもしっかりと周知していきたい」と話しています。
■施術受け 後遺症のトラブルに直面した女性は
SNS上で美容医療の体験談を見たことをきっかけに、リスクを詳しく把握しないまま施術を受け、後遺症のトラブルに直面した人もいます。
関東地方に住む20代の女性は、幼いころに親や親戚から姉と鼻の形を比べられ、自分の顔に自信が持てなくなり、コンプレックスを抱えてきたといいます。
女性はSNS上で、好きなインフルエンサーが大手美容クリニックの医師に鼻の施術をしてもらい、満足のいく形になったという投稿を見て、自分も施術を受けたいと考えるようになりました。
女性は「自分と同じようにコンプレックスを抱えている人が、整形して自信が持てるようになったという体験談は、キラキラした魔法のように見えた」と話します。
そして、同じ医師から鼻の形を整える施術を受けましたが、その結果、鼻の穴が狭まり、息がしづらくなってしまいました。鼻炎薬が欠かせなくなり、クリニックに相談しましたが、担当した医師はすでに辞めていて「施術した医師でないと分からない」と言われたといいます。
医師にも連絡をとりましたが、今度は「クリニックに相談してほしい」と言われ、対応してもらえなかったということです。
女性は、後遺症が出た時のアフターフォローの体制をクリニック側が整えてほしかったとした上で、自身も施術を受ける前に事前に調べておくべきだったと後悔していると言います。
女性は「SNSはネガティブな部分は見えてこないし、当時はきれいな部分しか見えなかった。当時の自分には『リスクをもっと重く受け止めるべきだよ』と言いたい。美容医療を受ける側が疑う目も持たないと、自分のように後悔する人は減らないと思う」と話しています。
■美容医療の関係者 “業界全体の信頼が失われる”
SNS上の体験談など美容医療の違反広告が相次いでいることについて、長年美容医療に携わってきた医師からは、業界全体の信頼が失われるのではないかと危惧する声もあがっています。
美容医療に30年近く携わり、都内でクリニックを開いている水谷和則医師は、ガイドラインを守ってSNSなどの広告を出しても、価格の安さやメリットだけを強調するほかの広告に注目が集まってしまうジレンマを感じていると言います。
水谷医師は「美容医療自体は昔よりクオリティが上がり、よい治療もたくさんあるが、患者を獲得するために“だまし”のような広告があまりに横行して、そのイメージが広がっていくと、美容医療は『うさんくさい』と誤解されるのが怖い」と話しています。
また、美容医療の広告を手がけるマーケティング会社の佐藤みゆ社長は、ガイドラインを守らずにSNSで情報を発信する医師やクリニックが最近増えていると感じています。
特に懸念しているのは、SNSで影響力を持つインフルエンサーに施術を体験してもらい、その効果をPRする広告です。クリニック側がインフルエンサーに法令に違反するような体験談を投稿するよう依頼し、フォロワー1人当たり1.5円の報酬を支払うと持ちかけるケースもあったということです。
佐藤社長は「注目してもらえたら勝ちという流れになり、いくつかのクリニックが手段を選ばない状態になってしまっている。インフルエンサー側も知識を身につけてほしいし、あやしいと思ったら、医療広告ガイドラインを確認してほしい」と話しています。
■日本美容外科学会 “まず行政が取り締まり 業界も規制強化検討”
美容医療のあり方を議論する厚生労働省の検討会の委員で、日本美容外科学会=JSAPSの青木律理事は、現状について「かつては美容医療を受ける人は芸能人など一部だったが、今は抵抗なく受ける人が多くなり、すそ野が広がった感じがする。若い女性がSNSなどの情報で自分もこうなりたいと刺激され、美容医療に興味を持つケースも増えている」と話しています。
その一方で、違反広告が相次ぐことについては「医療広告のガイドラインを改定し規制を強めても、また新たな違反が出て、いたちごっこの状態になっている。特に今はSNSやショート動画が広告の主戦場になり、情報も非常に多いので、すべてに網をかけて違反を指摘していくのが難しい状況になっている」と指摘しています。
その上で「ルールを守っている医師が、ばかを見ないよう、まずは行政がしっかりと違反広告を取り締まることが重要だ。また、美容医療業界も自主規制を強化しようと考えていて、業界のガイドラインを新たに策定した上で、どのクリニックが守っているかを明示できるようにするなど、適切に医療機関を選べる仕組み作りを検討していきたい」と話しています。
(NHK WEBより転載 2025年3月21日 22時05分 )
美容クリニックの豊胸手術が薬剤に関する特許の侵害かどうかが争われた裁判で、知的財産高等裁判所は特許の侵害に当たるとする判決を言い渡しました。専門家によると、医療行為による特許侵害を認める判決は初めてです。
都内の医療機器販売会社は、都内の美容クリニックの豊胸手術で患者の血しょうと細胞を増やす薬などを含んだ薬剤が使われ、特許を侵害されたと訴え、1審では退けられました。
2審の知財高裁では5人の裁判官の大合議で審理され、19日の判決で本多知成裁判長は、「医療技術の発展には製薬産業などの研究開発の寄与が大きく、特許の保護を認める必要がある」と指摘し、会社が発明した豊胸用の薬剤を特許と認めました。
そのうえで、「医師が治療などのため薬の調剤を行う場合、特許の効力は及ばないが、今回は豊胸が目的で、社会通念に照らしても治療と認めることはできない」として特許侵害に当たると判断し、クリニック側におよそ1500万円の賠償を命じました。
専門家によりますと、医療行為による特許侵害を認める判決は初めてです。
特許法に詳しい弁護士「美容医療の業界に一定の影響」
特許法に詳しい藤川義人 弁護士は「医師の調剤などの行為には特許が及ばないという特許法の免責規定があるが、美容が目的の場合は適用されないと判断されたのは大きい。美容医療の業界に一定の影響があるだろう」としています。
藤川弁護士は「今後、上告される可能性もある」としたうえで、今回の影響について「製薬業界にとっては特許法の保護の対象になると確認され、一層安心して研究、開発ができることになる。一方、美容関連の医療機関は免責規定を理由に『特許の効力が及ばない』と主張するのはほぼ封じられたことになる」と話していました。
また「生命の維持や回復を目的とする医療と、美容目的の医療との境界をどう分けるのかについてはあいまいな部分が残っている。同様の問題が美容以外の分野で起きたときにどう判断されるのかも課題だ」と指摘しました。
(NHK WEBより転載 2025年3月19日 16時55分 )
美容のために受けた再生医療で合併症が残ったとして、東京都の40代女性が、施術したクリニックを運営する医療法人を相手取って損害賠償を求めた訴訟をめぐって、東京地裁が医療法人の責任を認定し、原告に対して解決金を支払うことなどを求めた決定が7日、確定した。
決定は民事調停法に基づく手続きで、昨年12月13日付。裁判上の和解や確定判決と同じ効力がある。決定が通知されてから一定期間内に、女性側からも医療法人側からも異議申し立てがなく、今月7日付で確定した。
女性が受けたのは「bFGF添加PRP療法」。採取した本人の血液からつくる多血小板血漿(けっしょう)(PRP)を、本来は傷薬として使われる「bFGF」という医薬品と一緒に顔のしわなどに注入する。
合併症の報告が多いとされ、日本美容外科学会(JSAS)などがまとめた2020年の指針では「安易には勧められない」とされている。
訴状によると、女性は17年と19年の2回、医療法人社団美翔会が運営する「聖心美容クリニック横浜院」で、「プレミアムPRP皮膚再生療法」と称される施術を受けた。20年以降、目の下など施術を受けた部分に、しこりや皮膚の膨らみなどができた。
女性にはこの施術が「bFGF添加PRP療法」であるという認識がなく、施術前に医師から、bFGFを添加する手法を使うという説明もなかった。合併症の報告が多いなどの施術のリスクも十分に説明されなかったとして、施術費用(約87万円)や慰謝料など約649万円の損害賠償を求めて、2023年12月に東京地裁に提訴していた。
(朝日新聞より転載 2025年1月16日 8時00分)
肌を若返らせるとする美容施術を受ける患者に、しこりができるリスクなどを説明しなかったとして、全国で展開する美容クリニックが東京地方裁判所から調停で解決金を支払う決定を受けたことが分かりました。
これは7日、患者の女性と弁護士が都内で会見を開き、明らかにしました。
会見によりますと、女性は2019年までに2回、全国で展開する「聖心美容クリニック」の横浜市の施設で、肌を若返らせるとする「プレミアムPRP皮膚再生療法」という美容施術を受け、目の下やこめかみにしこりなどができたとして、クリニック側に賠償を求めました。
調停の結果、東京地方裁判所は先月、クリニック側が施術料や治療費などを解決金として女性に支払う決定をし、異議申し立てがなかったため7日確定しました。
決定で裁判所は、皮下注射に使われた「フィブラストスプレー」という製剤は、本来、傷などに使う外用薬で皮下注射は推奨されておらず、クリニック側がそうした事情やしこりなどができるリスクについて説明する義務を怠ったと指摘しました。
会見で女性は「つらさや悲しみは消えず、悔しい。裁判所の決定で今後、被害を受ける人が少なくなり、いま苦しんでいる人が動き出せるきっかけになると思う」と話していました。
クリニック側は「担当者が不在のため対応できない」としています。
(NHK NEWS WEBより転載 2025年1月7日18時11分)
美容医療をはじめとする保険外診療へ医師流出が止まらない現状を是正するため、厚生労働省が対策を打ち出す。内科や外科など、公的保険の対象となる一般的な診療に最低5年ほど取り組まなければ、自前のクリニックを開いても保険診療を提供できないようにする。
保険医療を扱う一般的な病院や診療所の管理者となる要件に、保険医療機関での勤務経験を求める。必要となる勤務期間は5年間を軸に調整する。
(NIKKEI Degitalより転載 2024年12月5日)
美容医療の適切な実施に関する厚生労働省の検討会が18日開かれ、同省は、病院やクリニックを対象に安全管理状況を年1回、自治体に定期報告することを義務付ける対応案を示した。委員から特段の異論はなく、健康被害やトラブルの相談が増えているのを受け、年内にも対策をまとめる。 報告された内容は自治体が公表する。想定する報告事項には、安全管理のほか、医師の専門医資格の有無、副作用などの問題が起きた場合に患者が相談できる連絡先、といった点を挙げた。 保健所が美容医療に関する専門知識を持っていない場合もあるため、国が立ち入り検査や指導の法的根拠を明確化し通知を出す方針を示した。
(2024/10/18(金) Yahoo!ニュースより転載)
厚生労働省は31日、美容目的などで「エクソソーム」と呼ばれる細胞の分泌物を使った自由診療が広がっていることを受け、そこで使われる製品には国の薬事承認を受けた医薬品はなく、安全性などが確認されていないと注意喚起した。都道府県などに対し、効果効能をうたうような製品の広告や販売への指導や取り締まりを徹底するよう要請した。
エクソソームを含むとされる成分を使った医療を行う医療機関に対しても、安全性に留意するよう求めた。厚労省は同日付の事務連絡で、①エクソソームを病気の治療目的に使用できると示している②承認された医薬品と誤認させる③医薬品のような効果効能を説明している―といった製品があった場合に、自治体が指導を行うとした。
医療機関向けには、エクソソームなどを用いた自由診療をする場合には、日本再生医療学会が品質やリスクの管理についてまとめた手引を参考に安全な実施に努めるよう呼びかけた。
(2024年7月31日 産経新聞WEBより転載)
厚生労働省は6月27日、第1回「美容医療の適切な実施に関する検討会」を開催し、美容医療に関する現状と検討の方向性を提示した。美容医療は健康保険が適用されない自由診療で実施されているものの、近年、不適切な医行為によるトラブルの相談が問題となっている。
(2024年7月5日 日経メディカルより転載)