外来を担う医師が多い地域での新規開業を抑制する改正医療法が5日の参院本会議で可決、成立した。国会での与野党による修正で都道府県が入院用ベッド(病床)の削減を支援できる規定も盛った。高齢化に伴う医療ニーズの変化に合わせ、地域の医療提供体制を効率的にするよう促す。
2026年4月から順次施行する。政府が通常国会に提出し継続審議となっていた。今国会でも不成立だった場合は施行が遅れる可能性があった。
都市部と地方の医師偏在を是正する対策として、外来医師が多い地域で病床のない診療所の新たな開設を実質的に規制する。
事前届け出制を導入し、都道府県知事が在宅医療など地域で不足する機能の提供を求められるようにする。従わない場合は施設名の公表や保険診療の対象機関の指定を6年から3年以内に短縮するといった措置がとれる。
地方の医師不足の解消も図る。都道府県が設定する「重点的に医師を確保すべき区域」で働く医師の勤務手当を増やす。医療保険料を原資とし、公布から3年以内に始める。
保険料の上昇要因となるため、検討段階で健康保険組合連合会が「妥当性を欠く」などと反発していた。
公的保険を使える保険医療機関の管理者について一定期間、保険診療を手掛けた実績を要件にする。美容医療など保険外診療への医師流出を抑える。
美容医療を提供する医療機関には安全管理措置の報告義務なども設ける。高額な契約や施術後のトラブルなどの相談が増えていることを踏まえた。
27年度から始まる新たな地域医療構想の土台となる規定もある。団塊ジュニア世代が高齢者となる40年代を見据え、入院病床だけでなく、外来、在宅医療や介護との連携を含む内容に衣替えする。
医療機関が経営安定に向けて病床数を削減する際、都道府県が支援できる規定も入れた。自民、日本維新の会、立憲民主、国民民主、公明の5党が合意し、衆院で修正した。
新型コロナウイルス禍での混乱を教訓に、医師が感染症の発生届を電子カルテの情報共有サービスで提出できるようにする。23年に一般病院で65%ほどにとどまる電子カルテの普及率を100%にする目標も与野党の修正で明記した。
全国の健診とレセプト(診療報酬明細書)の情報を集めたナショナルデータベース(NDB)について、研究などに適した「仮名化」を施したデータの提供を可能にする。遅れている医療のデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速する。
(2025年12月05日 日本経済新聞より転載)