医療機器承認を受けたmiraDry®の適正使用に関する注意喚起

miraDry®は、エクリン汗腺に作用して、重度の原発性腋窩多汗症の治療に用いられるマイクロ波を利用した医療機器です。
この度、miraDry®の適用外部位への使用に起因する可能性が高いとされる死亡例の症例報告がございました(Wen S, et al. Legal Medicine 2022;58:102095)。

その報告によりますと、体臭のために会陰部、性器、肛門周囲にmiraDry®治療を受けた健康な女性が、治療後に持続的発熱、持続的疼痛、治療部位からの出血といった重篤な副作用を生じ、トキシックショック様症候群を合併したフルニエ壊疽によると考えられる急速な全身状態の悪化によって6日目に死亡したとされています(係争中案件)。miraDry®️の施術が死因に直接関わったかは現時点で定かではありません。
また、本事案ではmiraDry®️が重度の原発性腋窩多汗症治療を目的に使用されていません。しかしながら、miraDry®️の適正使用の内容について改めて確認をお願いする次第です。

miraDry®は高度管理医療機器・特定保守管理医療機器、つまり使用目的に沿って適正に使用されている状況で副作用や機能障害などの不具合が生じた場合、人の生命および健康に重大な影響を与えるおそれがあり、その適切な管理が必要とされる医療機器です。2019年8月の添付文書(第2版)において以下のような注意喚起がなされています。

【使用目的又は効果】
本品は、重度の原発性腋窩多汗症を治療するために使用する機器である。
【警告】
 原発性腋窩多汗症の診断にあたっては、最新の原発性局所多汗症診療ガイドラインに従うこと*。
 [多汗症の診断や重症度の判定、発汗部位の特定を誤ると、リスク・ベネフィットのバランスを保つこと
 が困難となる]

【禁忌・禁止】
 適用対象(患者)
 1.以下の患者には適用しないこと。
  • ペースメーカ又は他の電子機器が体内に埋め込まれている患者
   [埋込み型医用電子機器に誤作動を招き、重大事故につながる可能性がある]
  
  • 腋窩付近に金属製のインプラント等が埋め込まれている、又は刺青のある患者
   [埋め込んだ金属が発熱し熱傷をおこすことがある]

  • 治療部位に悪性腫瘍、又は皮膚悪性腫瘍がある患者
   [悪性腫瘍の活性化の懸念がある]

 使用方法
 1. 水溶性以外の潤滑剤(超音波ジェル又はIPLレーザジェル等)を使用しないこと
   [バイオチップの吸引孔に潤滑剤がつまり、皮膚が十分に吸引されずに熱傷をおこすことがある]

 2. 酸素又は麻酔を含めた可燃性ガスの周辺で本品を作動させないこと
   [マイクロ波が発火原因となり火災、熱傷の危険性がある]

 3. 腋窩以外の多汗症発症部位には使用しないこと
  [合併症である代償性発汗が生じた部位等に対する使用は、有効性及び安全性が確立されておらず、重篤な不具合、有害事象が発現するおそれがある]

(*)最新の原発性局所多汗症の診療ガイドラインは現在改訂作業中で、近々出版される予定です。

miraDry®︎を使用する際は、副作用に対して対応できる施設において、適用患者を熟慮し、有効性と副作用については十分なインフォームドコンセントを行った上で適正に使用していただくようご確認をお願い申し上げます。

原文:https://www.dermatol.or.jp/modules/important/index.php?content_id=70
(2023年1月27日 公益社団法人日本皮膚科学会HPより)